(4)I LOVE N.Y.〜後編〜
前回までのあらすじ:今秋10月から放送される第2期「天体戦士サンレッド」の新OP「続・溝ノ口太陽族」を急遽ニューヨークでレコーディング(以下REC)しようということになり、3泊5日の強行スケジュールで
前半の1日目は撮影ロケハン、2日目は撮影、そして本丸である3日目レコーディング当日。
この3日目一日でRECを終了させなければならないという、随分とファットなジャックバウアー(←私のことです('A`))がニューヨークに出没することになった。
新宿のテキサス(なの?)西新宿生まれが放つ、政令指定都市川崎市の地域密着アニソンを、キング・オブ・アメリカ(?w)NYで仕上げる、日米合弁事業の行方は如何に。
今回も前回同様「です・ます」調ではなく「だ・である」調の比率が高いですが、あくまで表現上の仕様です。
3日目
午前9時。今日は昨日より1時間早い待ち合わせ。何故なら僕だけ先に帰国してイベントに出るという重責があったのだ。よって僕は今日一日しかスタジオに立ち会えないのだ。無念。
ホテルを出た。曇天。しかも8月だというのにえらく寒い。
え?あんだって?20度ないってか?
さすがは青森と同緯度。おまけに雨もポツポツ('A`)
manzo=雨男の威力にはかの合衆国も勝てなかった模様。
本日はフライングドッグ野崎氏・南氏、サウンドバレイ伊藤氏、カメラマン久保田氏、そして僕という「旅姿五人衆」に増員しての出陣である。本日もまた地下鉄移動で、かのジミヘンの愛した「Electric Lady Stuido」へ!(フォクスィイイイイ〜)
http://www.electricladystudios.com/
33rd stationからAstro PL stationへ。後ろに傘を持っている久保田氏と見切れているサウンドバレイ伊藤氏(笑)。写真は33rd station構内。
午前10時前、予定通りスタジオ入り。
僕が想像していたのと全く違うたたずまいなのにビックリ。何だこの何気なさは。今までの幾重のロッククラシックスを産出したところとは思えないひっそり感。えらく謎めいてる・・・。
入り口。なんか年季入ってる。ホテルのエレベーターといい、アメリカは年季入ってる建造物が多いなぁ。
大きな地図で見る
一応、スタジオ付近のGoogle map。Astro PL station下車、徒歩5分といったところ。日本で言うと駒沢、三茶、用賀の雰囲気に似てる。ヒスパニック系のお母さんたちがベビーカーを押していた。世田谷マダァムと言ったところか。
地下のスタジオ入り口。
ここにジミヘンもいたのかぁ・・・。
万感の思いだよ。。。
入り口ロビー。なんやら賞取ったディスクが並んどる。
すげぇなぁ、ジミヘンだよジミヘン。
高校時代、さんざっぱら「Axis:Bold As Love」をカセット(しかもメタルカセット!)に録って聞いてたっけ。中でも「If 6 was 9」が大好きで、途中の
(※註)逆相ミックスに脳内トリップしてたっけ・・・・
・・・・・・ん?
あぁぁぁああああああああああ!!!!!
ここで録ってたんかぁあああああああああ!!!!!!!!
SUGEEEEEEE!!!!!!
よくよく見たら他もメンツがすげぇじゃんか!
ほらほらポールも(;´Д`)
ほらほらDave Matthewsも!!!!
ほらほらジャケ写ちっこいけどDavid Bowieも!!!!!!!
とまぁスタジオ入室前からトランス状態。
CDや雑誌でしか見たことない人が実際に足を踏み入れた場所に来ると、こうも臨場感が違うんだね。
東京タワーの蝋人形館より全然リアリティがある
当たり前だよね。向こうは蝋人形だから(笑)。
コンサートやライブというものに殆ど行かない僕にとって、久しぶりの音楽的な臨場感だった。
普通にサンタナ
果ては、つい先月亡くなってしまったLes Paul氏。
11時も回った頃、アシスタントと共に、重鎮のエンジニア、joe chiccarelli(ジョー・チカレリ)氏がスタジオレコーディングのセッティングを開始する。
流石に僕はエンジニア諸氏までは不勉強で見識がないのだが、野崎氏に経歴を聞いてまた失禁してしまった。
http://www.united-mutations.com/c/joe_chiccarelli.htm
何だってぇEEEEEEEEEE〜!
Frank Zappaのエンジニアリングもシテルダとぉおおおおお!!!!
日本だと中島みゆきさんとかさ・・・・・
何だその辣腕。
そんな人が、俺の曲の俺のこの鬱陶しいアレンジの俺のこの暑苦しい歌でいいのかよ!!!
そのジョー氏のお写真は、セッティング中ということもあり遠慮する。その代わり、機材類の撮影・ブログ掲載許可は事前に頂いていたので、RECが始まる前に少しだけ撮影。
スタジオ全景
ちょw
都輝かと思ったwwwwwwwwwwwww
テラムーディーwwwwwwwwwww
てか、各楽器の音漏れがないようにパテーション区切ってRECするのでは?と思いきやアニハカランヤここは異国だった。
「え?別に全体でしっかり聞こえてればいいのでは?結果で判断してこれれば大丈夫だから」というのだから驚きだ。
白いスタンウェイ。珍しいので。帰国後友人の津田氏に見せたら、
「何か白いピアノってリチャードクレイダーマンだよね」
君はいつも的確すぎる。ネ申www
機材類。詳細を書くとブログという趣旨から外れるので割愛。僕がわからんもんもちらほら('A`)
しかし、サウンドバレイ伊藤氏に言わせると「至って普通ですよ。てか、日本が真似してるわけだから突飛なわけがないんですがね。ただ、物持ちがいいですよねぇ〜」と。確かに左下段のEQなんてこれいつんだよ!って感じ。
そうなのだ。何も物珍しいことがないのだ。
最近ではAlicia Keys、このRECの前日は、Coldplayなんかが普通にREC・ミックスをしていたという、最先端のスタジオなのに、オーセンティックな精神が保たれている。妙に安心したというか、納得できた。
正午に向けて、今回の「続・溝ノ口太陽族」NYバージョンのバックバンドのナイスガイ達が集結した。
どいつもこいつもカッコイイんだこれが。
(Gt)Rob Bailey
http://www.robbailey.biz/
僕の大好きなディーヴァAnastaciaやCyndi LauperのRECにも参加してるクールガイ。あぁ憧れのバークリー卒。ヘッドアンプやキャビネット、そういった秘伝のスープを見ることは出来なかったのが大変心残り。短時間で仕上げなければならなかったので、割とみんな緊張感があったのさ('A`)
(Dr)Brian Delaney
http://www.nydolls.org/
泣く子も黙るアメリカンパンクバンドの雄、NewYork Dollsの屋台骨。
「manzo、お前の曲、難しい。けど楽しかったよ」と、ベテランを困らせてしまった・・・。最初からバンドRECなら、こんなんしなかったヨ・・・(´・ω・)
(Ba)T.M.Steevens
http://www.tmstevens.com/
トリを飾るのがこの人。ご覧の通りのムードメーカー(笑)。見かけこそ強面なのだが恐ろしいほどの親日家で、日本語も今回のメンツで唯一喋っていた。しかもかなり饒舌w
「manzoぉ〜、曲、ムツカシヨ〜!デモベンキョウナルカラokネ〜!」
2枚目は彼の機材。これは貴重なショットだ!
すると、
「You Play This Song Bass? Oh,That's Great.ボクノベースでCan You Play Bass ?」
で、3枚目。オイオイ。天下のT.M.Steevensのベース弾いちゃったよ!!!!!!
かくして、14時過ぎからドラムのセッティングに入り、17時くらいから「せーの」で録っていった。
その間3時間近く、くだんのエンジニアJoe氏は、ドラムのマイキング(マイクの設置場所、種類などを調整すること)をひたすら。
野崎氏も僕もほとほと感心する。
萬「アメリカのエンジニアさんって、押しなべてこんな感じなんですか?」
野「いや、中でも彼はこだわりの人だね」
やはり。
オーセンティックであるということは、そういうことなのだよね。
変えないことと、変えるべきところと、変えるか変えないかを敢えて決めないところと、これらは全て合一なのだよね。
その人その人の哲学であって。
「せーの」録音はあっという間に終了。3時間のセッティングでREC自体は小1時間。
ここもスゴイなぁと思った。
この後、野崎氏と僕で皆さんに色々とオーダーしていったのだが、野崎氏は英語でちゃんとコミュニケーションが取れているのだが何しろ僕は殆ど英語が喋れない。
英検なら2級くらいまでは読めるのに(´・ω・) 。
如何に自分が役立たずかを思い知る。
そこで、、、、、
直してほしいところは、ドラムのBrian氏には手振りでフィルやタム指定を、ベースのSteevens氏には口頭でフレーズを歌い(もしくは弾き)、音楽理論に詳しい(何しろバークリーだもん)ギターのRob氏にはコードネームを口頭で言っていくという、えらく根気の要るやり取りを余儀なくされる。
音楽に国境はないのであるが、音楽制作にはしっかりと国境があったわ(笑)もちっと英語勉強しよう・・・。だめだ俺('A`)
自国ではあっという間の作業も、トコロ変わればそうはイカのゴールデンボールなのだ。結局22時近くまで作業は続いた。そして残念なことに冒頭の通りミックスされた音源を聞けないままニューヨークを後に帰国することとなった。
自分へのアメリカお土産は二つ
大好きなAnnieのサントラがあったのと、スタジオワーク中待ち時間の間本屋で購入した向こうのDTMマガジン(笑)
以下雑感。ちょっと真面目に少しだけ。
今回のNYRECで、日本の昨今の「ベルトコンベア式音源制作」と換言できそうな音源の量産体勢との両翼を見た気がした。
コンプバッキバキに掛けないと「何か地味だよね=売れないよね」という図式とか非常に危険。タイトルを多くやらねばならんのは世知辛いけどその為のアウトソーシングなわけでさ。じゃぁしっかり都度指示すればいい。つまりは、しっかりジャッジ出来るプロデューサーが減ったことを実証してるよこれ。
一部のそういうお手軽で下品な思想が、若者聴覚のミスリードを招いていたりするのかなぁ・・・・と、異国の地で身震いがした。そら恐ろしいよ。
マスタリングやコンプのあり方は、その時代時代で変貌して然るべきだが、一元的であることは非常に危険。
前世紀の政治思想となんら変わらんと思う。
さてさて、今回も長きに亘って(作成に6時間('A`))お送りしましたブログ、ってかほぼ旅日記みたいになりましたが(^^;)、残すところ後1回でございます。
(※註)
逆相:配線の+と-を間違えてつないでしまったり、ヘッドフォンがちゃんとつながっていなかたりして、楽器の響きが変になったりすることがあります。そのような音が出ている状態を逆相といい、正しい状態を正相と言う。